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第13話 『幸福を支配する者』

収入の多寡にかかわらず人は青果・ナッツ・鮮魚・食肉・米などの炭水化物をバランス良く、大勢の心許せる人たちと楽しく美味しく食べるだけで人生の大部分を幸福に感じることが出来る。

問題は現金での支出が収入より多い場合。
しかしこの国を一家庭に置き換えて考えると不思議なことがわかる。
実はこの国の収入を年間300万円くらいの地方都市の普通の家庭レベルに置き換えると分かるのだが、毎年「国債」と言う借金で150万円近くを借り入れていることになる。
つまり年収の1.5倍の生活を続けている計算になる。
だから税金を国民から多く取り上げ借金の返済に充てたいのだ。

国からしてこの調子なのだから一国民が年収の内側で生計を立てようとしても難しいのは明白である。

国民の生産性を上げるべく主婦や老後の人まで労働人口市場へ引き込み、家庭には母が作る健康的な食事も無くコンビニで食事を済ませるよう書かれた置手紙と数百円がテーブルに転がるのみ。
少子高齢化を抑制しようとか言ったところで幸福な子供時代を過ごした事が無い人が大人になって子供や家庭を作りたいと思うだろうか?

少子高齢化の一番の原因は所得格差をおいて他にない。
子供が減り続けているのではなく子供を作るカップルが減り続けているのだ。
カップルになるには一生懸命働けば将来子供を養い自分の老後を安定させることが出来ると信じるに足るビジョンが必要。

それがどこを見渡しても国民の目先を他へ向ける『ガス抜き政策』ばかり。
戦後、かつてGHQによって国民を馬鹿にするために強いられた政策が戦後80年近くも続いているのだから驚きを隠せない。

一体誰が何のために?
ありとあらゆる分野に渡りそれらの介入は見て取れる。
一体、今の政権は誰から「この国を取り戻す」つもりだったのか?
国債が増え続けている訳だからどうやら取り戻せていないようだ。

この国は不思議なことだらけである。

小説家になるために自分の小説を投稿するサイトでは『異世界転生もの』と言われるジャンルが圧倒的な人気らしい。
要は「今の日本人の若者の多くが、生まれ変わって自分が有利な別の世界で活躍することを夢見ている。」のだ。
かつて念仏を唱えるだけで極楽浄土へ行けると信じられた宗教が流行した時代があったようだが、その時代と同じくらい『殿様』と一般大衆の格差が大きくなったことを示唆するような現象だと思う。

今更まともに頑張ってもビッグになるチャンスは皆無だと信じる若者が増えているせいか、『人を騙してでも自分さえ裕福になれば良い』と考える者たちの犯罪が増加している。
誰しも心の隅っこくらいには人としての良心は残っていると信じたい。
だとすればまともに頑張って普通に暮らせる国ならリスクが大きすぎる犯罪にわざわざ手を染めようと思うだろうか?

この現象はどうやら我が国だけではないようだ。
世界的にこんな仕組みを作り固定化したのは一体誰なのだろうか?

「国際情勢は複雑だ。」と言う人もいるが時間に打たせれば誰が一番得をしているのか、自然と馬脚を現すもの。
その「秩序」が崩壊するとき、どんな世界が訪れるのだろう。

ま、俺はその時まで生きてないだろうけど。