田子作迷作劇場トップへ戻る

第27話 『魚と来客は2日目から臭いだす』

「ぐぶぅ~、困ったですぅ・・・」
エーコは朝から晴れない顔をしている。

「仕方ないだろ、昔世話になったんだから。」
田子作は声を潜めエーコを宥める。

「それでも今日で3日目ですよぉ。どんな借りがあるというのですか?」
エーコはふくれっ面を隠さず田子作に文句を言う。

「大昔の話だがヤンチャのし過ぎで金に困って路頭に迷っているところを匿ってくれたんだよ。」
一層ボリュームを抑えながらも釈明する田子作。

「一体どこの誰なのですか?」
エーコは今にもオデコに怒りマークでも現れそうな勢いのまま小声で問い詰める。

「世界的大企業の元取締役のSさんて方だよ。しっ!」

「ぶっ!ごほんっ!ぶほっ!」
朝食が喉に詰まり突然苦しそうに咳込み始めた初老の紳士。

「エーコ、お茶!早くしろ早く!」
慌てる田子作。
急かされてエーコも慌てている。

「だ、大丈夫ですか!?お茶をどうぞ。」
紳士は咳込みながらエーコが差し出したお茶へ手を伸ばした。

ズ、ズズズゥ~
まだ熱い杜仲茶を息で冷まさずに一気に啜る紳士を厨房と客席の仕切り暖簾の隙間から心配そうに覗いている田子作。

ようやく呼吸が整い落ち着きを取り戻した様子の紳士の姿に胸を撫で下ろす。

「いやぁご馳走様でした。本当に美味しかった。」
満面の笑みで両手を合わせてご馳走様と言いながら軽くお辞儀をする紳士。
言われてみれば確かに立ち居振る舞いにはどこか大物感が漂っているとエーコは思った。

「あ、いえ、お粗末さまで。」
急に緊張し始めたエーコはそそくさと食器を片付け洗い場へと戻っていった。

「何が『お粗末様』だよ!俺が作ったんじゃねぇかよ!」
田子作は、勢いよく水を流し食器を洗いながら口パクでエーコに抗議する。
『知らん知らん』と口パクで返すエーコ。

「ところで・・・」
厨房から出てこない二人に男は話しかける。

「はい?!」
慌てて二人揃って返事を返す。

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