第50話 『夢を叶える簡単な方法』

「本当にこれで夢が叶うんですか?」

「なんだよぉ、疑わしい目つきしやがって。」

「だってこんな簡単な方法で夢が叶うんだったら皆してますよ。」

「それが案外しないんだよ。方法を教えた上にこの方法できちんと分析して『明日からこれさえすれば全て夢が叶う』ってところまで導いてやってるのにちゃんと行動する奴はわずか20%位なんだよな。」

「じゃあみんなが夢が叶う訳じゃないんですね?」

「夢を本気で叶える気があればちゃんと叶うんだが、『こうなったらいいなあ。でも自分には無理だろうなあ』と感じてれば初めから叶える気が無いんだよ。」

「じゃあ『宝くじに当たりたい!』という夢は叶うのですか?」

「叶うかもしれんし叶わないかもしれん。そもそも他力本願な夢は叶いにくいな。自分の夢は自分で掴まんと。」

「何だぁ。結局夢を掴むためには努力が必要ってことですね。」

「普通夢ってそんなもんだろうよ。そもそも本気だったら夢に向かう取り組みを努力とは感じないものだ。努力してるとか苦しんでるって自覚があるうちは夢の達成は無理だな。」

「ではこの夢コーチングの意味って何ですか?」

「本来、人は自ずから自分の夢を知ってるし達成すべき順番も知ってるんだよ。でも日頃の忙しさやストレスで正しい順番を見失いがちになる。そんな時この方法ですっきりと叶えるべき夢の順番を整理整頓してあげるんだ。」

「それだけで全ての夢が叶うんですか?」

「全てとは言わんがほぼ叶うと考えて良いだろう。」

「凄い自信ですね。」

「ほら、これを見ろ。」

「夢ノート?」

「脱サラして16年書き続けてきた夢のノートだ。」

「うわ、本当にほとんど順番に夢を叶えてきてますね!?」

「ふふふ、凄いだろ?時の情勢で多少は順番が入れ替わったり、そもそも必要が無くなったりしたのもあるが大体大筋で最終目標に向かってるだろ?」

「確かにそうですけど最終目標まではまだ相当時間が掛かりそうなんですけど。」

「そうでもないさ。たった一つのパーツが揃えば今の状態なら一気に全て上手くいくはずだ。」

「その一つのパーツって何ですか?」

「それは俺にもわからん。その時が来れば『あー、これだったのか!!』てな具合に気づくはずだ。今までもそんな感じだったしな。」

「へぇ、そんなもんなんですか?」

「早い話が『夢を叶えたいなら一旦夢を忘れなさい。』てことだ。そして逆算で叶えるために何をするか静かに考えれば誰でも夢は叶うもんだ。」

「夢を忘れて夢を叶う?難しいです。」

「だからこの方法で忘れながらにして夢を見るんだよ。」

「何だかやれそうな気がしてきました!!詳しい方法を教えてください!!」

「やだ!」

「は?」

「無料で教えると80%位の奴が俺の時間を無駄にするから今後はしっかりとお金を受け取る。本気の奴なら支払えるくらいリーズナブルな価格だしな。でも本気じゃない奴は払わない金額にしとく。」

「いくらなのですか?」

「1回の夢コーチングで2時間くらい掛かってたから時給2000円として4000円くらいが妥当だな。」

「時給2000円て高くないですか?」

「公務員の時給はそれ以上だぞ。俺が安くする必要があるか?今までさんざん何でもかんでも激安だったり無料だったりしてやったが誰も価値に気づかんし感謝すらせん。そのくせ困ったときだけ助けを求める。そんな奴とは今後一切関係を持ちたくないからな。」

「本気の人だけ相手にするということですね?」

「当たり前だ。相談に乗ってる間も俺の寿命はどんどん削られてるんだぞ?1時間2000円じゃあ占い師の1/4くらいしかならん。これでも安すぎるくらいだ。」

「なんだか随分シビアになりましたね田子作主人よ。」

「俺は金が欲しいんじゃなくて本気で夢を掴もうとする本気の人とだけ出会いたいんだよ。だから有料にしたら一人も客が来なくなっても全く気にせん。でもな、大体人って共鳴するから俺がギラギラ燃えてる間は似たようなギラギラした奴が来るもんだ。お互いに居心地がいいしな。」

「私もギラギラしてますか?」

「お前はポワポワしてるな。夫婦はそれくらいが丁度良いんだ。瀬戸物同士じゃぶつかったらお互いに壊れてしまうからな。」

「確かに田子作どんはちょっとしたことですぐにハートが壊れてしまいますしね。」

「ガラスのハートだからな俺は。」

「認めちゃうんですか?!」

「最近素直になったんだ。見え張ってても始まらんし。弱いところは弱いでお互い補強しあえる相手と組めばいいしな。」

「なんか最近の田子作どんは一皮剥けた感じですね。」

「実際一皮剥けたしな、この間のビーチでのスイカ割り大会でな。」

「そっちですか!?」

「この調子で何枚でも脱皮するぞ!!」

「人型の脱皮ってオークションで売れるかな?」