第22 話 『AI時代に必要とされる人材とは』
「これから先はどうなるのでしょう?」
数日前の新聞を客席で開いて読んでいたエーコは田子作主人に話しかけるでもなく呟いた。
「俺に言った?」
確認をして返答するか決める田子作。
「え?あぁ、こんなにAIの進化が早いと、私の老後まで人間がする仕事が残るのかなぁってなんとなく不安になったのです。」
珍しく神妙な顔付きをする妻エーコ。
「ある意味お前だけは大丈夫だ。」
自信満々に応える亭主田子作。
「私だけはってどういう意味ですか??」
不思議で堪らないといった表情のエーコ。
「根本的に考えてみろ。誰が何のためにAIを進化させてると思う?」
「それは権力やお金を沢山持ってる人が今の力を温存永続させるためにでは?」
「若干陰謀説めいているが半分は正解ということにしよう。ではAIが進化するとどうなる?」
エーコは、この質問には流石に考え込んでしまった。
「AIと一口に言っても多種多様な使いようがある。でもそれらは一体何のために使う?」
「それぞれの仕事をさせるためでしょ?だから人間が要らなくなるのでは?」
「『それぞれの仕事』=『それぞれの問題解決』と考えたら?」
「問題解決??」
「そもそも『問題』とは何だ?」
「トラブルとか?」
「トラブってるかどうかは誰がどうやって決める?」
「それは流れが悪くなるとか、状態がいつもと違うというか・・・」
「例えば交通とか金融とか決められた反応をきちんとしないといけない状況であれば即座にトラブルだと認識できるよな?」
「そうですね。」
「ではマンション内の人間関係や男女間の恋愛のもつれは誰が『問題』にする?」
「確かに問題かどうかは当事者同士の認識に依りますから難しいですね。でもそれと私の未来が安泰なのとどのような関係が?」
「AIはあくまで統計論的解決法しか出せない。しかも人間のように自分と言う肉体に閉じ込められていない。つまり人間関係の問題は人間にしか今のところは発見できないんだよ。」
「確かにそうですね!・・・で?」
「だから毎日毎日問題ばかり次から次に起こす人間が居たらAIは『解決する仕事』が生まれて嬉しいだろ?」
「そうか、このまま権力争いを続ける金持ちや権力者がAIを進化させすぎるとやがて自我が芽生えて失業の危機を感じるようになるのか!」
「ということは、どんな人間が彼らにとって神様に見える?」
「毎日トラブルや問題を起こす迷惑な人!!だから私は安泰なんだぁ!って、ちょっと!!」
「俺は何もお前を批判していないぞ。お前が勝手に導き出した答えだろ。」
「はぁ~、このおっさんにはAI(愛)が分かってないわ。」
「どーゆー意味だよ?」
「あのミスもこのミスも全て田子作主人のボケ封じのためにわざとしていることに気が付かないとは情けない。」
「お前本気でAI(愛)の鞭でしばくぞ?」
「AIAI(あいあい)」
「コ・ノ・ヤ・ロ・ォ」